(これは2005年のお話です)
きました、ついにきちゃったよ収録の日が。
前日は興奮しちゃって寝不足です。
いくぶん据わり気味の眼をむりくりうごかしながら集合場所でむっり黙り込んでしまっております私。
他のオケメンバーも、もひとつ爽やかさにかける表情を貼り付けつつ三々五々のあつまりで。
スタジオへは例によってカルガモ行進で連れて行ってもらいます。
私たちの控え室はステージすぐ横、近っ!
いわゆる大部屋とよばれる部類の楽屋へと通されますとそこにはYVでおなじみの**さんやら******師匠がたやらがいらっしゃいまして・・・・・・・・ぎゃーっ!大変だぁ!!
いいんですか、一緒にいていいんですかああああ?
「のこオケだけ隔離したらそれはもはやVIP扱いだってば。」
そういえばそうなんですけどね。
なんとなーく部屋の片側あたりにオケメンバーが貼りつくような状態で各自自分の荷物置き場を確保しました。
さて、さっそくサウンドチェックおよびライティングチェック。
衣装はまだ着なくていいからとりあえず持って舞台へ来いとの由。
ノコとともに携えて恐る恐る舞台袖へと急ぎます。
広くて立派な設備だなあ。
この舞台袖だけで私の部屋の二倍、いや三倍以上はあります。
棲んじゃおうかなここに。
そして肝心な舞台はというと、絶句!
は、派手派手やがな・・・・・・。
満完全色狸御殿。
ええと、ここは何処ですか、タイガーバームガーデンですか(笑)
めちゃくちゃオメデタソウなセットが組みあがっております。
私というしょぼい存在がますます影薄くなりますわいな。
え?私にぴったりですか、そうですか。
おや、ADさんが小さな箱馬(木箱のようなもの。踏み台に使ったりセットを組み立てる土台にしたりと色々便利)を持ってきてくれました。
わざわざ黒く塗ってくれています。
をを。これにノコの柄を「どん」と打ちつけろというのですね。
試すといい音がします。
ありがとうございます。うれしいな。
これ、もって帰ったら・・・・駄目?
いよいよホット師匠がたと音あわせ。
あれれ、気のせいか昨日の練習時よりテンポはやくなっていませんか。
っつーかマジ早いよ。
これでいくの?
了解しました。やります、やりますってば。
はいはいS師匠なんですか今度は。
・・・・・・・・・・。
アレンジちょっと変えるんですか、マイクが音を拾っていないから。
叩くリズムをちょっと変更するんですね。
ふーん、ちょっとだけなんですねええええええ、そうなんですねえええええ(爆)
何のために衣装をもっていったのか良くわからないまま、オケ隊撤収。
楽屋へ戻るなり円陣を組んで、今変更になった箇所をおさらい。
おさらい、おさらい、そして泥縄な特訓へ。
「だーいじょーぶだって、いけるいける。」とS師匠はおっしゃりますが。
あの、わたしらミュージシャンとしてはアマチュアですから。
いくら発表の場数をふんでいるからといって当日変更されたらパニックおこしますよ、堪忍してください。
らく乃は早々にシリアスモードを解除ならびに放棄いたしました。
まともに悩んでいたらますます泥沼へはまります。
しかしオケメンバー中にはスコア急変のショックで顔色が物凄い色に変わっている方も見受けられます。
ひー。
お弁当の味も良くわからないまま、べろんごくんと嚥下しているあいだにホールは開場。
観覧希望の抽選に当たったお客様がぞくぞくと詰め掛けてくるさまが楽屋モニターに映っています。
わあああ、はじまるよ、はじまっちゃうよーと皆で話しているうちに。
いよいよ開演。
本日の舞台はTV番組二本分だそうで、約三時間の長丁場であります。
「音もの特集」と銘打ってあるとおりタップダンス、歌、歌謡漫談、音曲漫才、浪曲・・・・。
楽しいじゃないか。
楽屋のモニターに釘付けになってしまいました。
そうこうしているうちに我らがサキタハヂメ師匠の出番に。
メイクさんにお化粧してもらっていつもより男前度がUPしております。
髪型かわいい(笑)
のこオケになくてはならないピアニスト、小松なお子さんの伴奏によるソロ。
曲は「蘇州夜曲」。
♪きーみが みむーねにー だかれてー きくはー
美しい・・・。
涙出そうですがな。
切なくて切なくて。
いったいどうやればあんな音色になるのだろう。
小松さんのアレンジがまた素晴らしくて。
楽屋で「気合はいってるんですよ~」とおっしゃっていたのも頷けます。
もちろん拍手喝采。
お笑い番組なのに笑いが一つもなかったですが、いいんです、これで。
観客のじーちゃんばーちゃん吃驚してたでしょうねえ。
こんなの見たことないはず(笑)
番組終盤、ホット師匠たちが登場。
ノコはあとでのこオケとのからみでやるので漫才は歌ネタで。
お客さん大喜び。
半世紀以上の芸暦のものすごさに圧倒されてしまいます。
「のこぎりで、あそぼー!」
派手派手舞台が薄い緞帳で仕切られました。
緞帳の前に登場したのはアキラ師匠とサキタ師匠。
これからちょっとしたゲームをするのです。
その間のこオケとマコト師匠セツオ師匠は緞帳の後ろでスタンバイ。
舞台デレクターさんがマコト師匠にキュー出しの打ち合わせをしています。
ええと、舞台袖からペンライトの光でキューをだすから、緞帳が上がるのにあわせてイントロ演奏したらいいわけね。
了解しました。
緞帳の向こうでは「のこぎりがなんてしゃべっているか当ててみよう」とか「二人で同時に違う曲弾くよ」とか愉快なゲームが進行しています。
のこオケメンバーも聞こえないよう低い声で回答を言い合ってみたりしています。
TVオンエアでは編集されていましたが、実際は問題数がけっこうあって待ちくたびれていたりはしたのですけれど。
回答者の芸人さんたちがマジなのかワザとなのかトボケた答えを連発してなかなか先にすすまなかったし。
聞いていて面白かったけど。
お?
ゲームコーナー終わったな。
舞台袖からペンライトの光がキューを出してきた。
「ワン・ツー」
マコト師匠の合図でのこを構えるオケメンバー。
♪どん きゅーい ぽ ぽん こ・・・・
あれ、緞帳が上がらない。
わわわ、演奏ストップですか?
「わん・つー」
♪どん きゅーい ぽ ぽん・・・
え?まだ弾いちゃだめなのデレクターさん。
だってさっきの話だと。
え?まだ駄目なの?
結局緞帳が上がりきってから舞台袖からキューが出ました。
マコト師匠、静かに怒っていらっしゃいます。
そりゃそうだ。
アキラ師匠とサキタ師匠も打ち合わせと違う展開に戸惑った視線をこちらに向けます。
ひー。
違うんです違うんですー。
私らのせいじゃないですー。
「わん・つー!」
♪どん きゅーい ぽ ぽん こ じゃっ ぼにょー ぱひょん!
再度のカウントでようやく演奏が始まりました。
曲は「べサメムーチョ」
アキラ師匠に敬意をしめして「叩く」構成になっています。
ドン!と打ち鳴らす箱馬、なかなかいいかんじです。
和のこを打つ音も適度に間抜けで適度にかっこよくて面白いなあ。
お客さんの前だから、私も客席を見つめてにこやか風に演奏してみましたが、だれもオケの方みていません。
全員視線はホット師匠たちに釘付け(笑)
ま、負けたあ。
続いて「六甲おろし」
あわてずにマレットを弓に持ち替えます。
イントロ部分からお客さん大喜び。
手拍子が鳴り響きます。
♪おー おー おおー はーんしーんたいがーす!
やはり関西はこの曲やるに限りますなあ。
サビの部分ではサキタ師匠の立ち弾きも披露しつつの大盛り上がり。
「ではみなさまおまたせしました、せーの!」
♪おーまーえーはーあーほーかー
「うえわあ~~~~~~~~~」
突如のこを掲げて踊りだすアキラ師匠。
♪じゃ~~~~~ん じゃかん!
終わった。
拍手喝采。
ふー。
オケメンバーも立ち上がり客席に礼。
「これで終わります。さよならー。」
司会の石田靖たちとともに手を振って・・・・幕。
いろいろとトラブルがあって納得いく演奏はできませんでしたが、ホット師匠たちは「また一緒にやろうな」と仰ってくださいました。
もちろん、師匠がたのためならば、たとえ火の中水の中。
いつでも参上いたします。
まあ、とにかく、今日は。
「おつかれさまでしたー!」
おしまい
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