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のこぎり莫迦につき危険なり取り扱い注意
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 過去ログいざガーデンパーティ   [ アメリカ決戦2004 より]     

さて日もそろそろ暮れてきた。
ゆるゆるとストリートライブ(?)を終えた一行は、一旦家やホテルに引き返すこととなった。
夕方からローリングキャンプの方へ会場をうつしてパーティをするとのこと。

いいねえ。
日本代表女性陣はそそくさと自室にもどりお色直し。
こんなこともあろうかと浴衣を持参してきたのである。
流石に雀さんはそこまで手が回らなかったらしく、カジュアルなパンツスタイルに、まいどちゃんから借りた和てぬぐいをネッカチーフのように巻くことにしていたが、大阪組は浴衣二名、甚平一人とばっちりドレスアップ。
筆者は手製ののこぎり柄うちわを帯にセット。
さあこいアメリカ。

駐車場でにわか撮影会。
まいどちゃんは出発前に誕生プレゼントとして「日本代表」と染め抜かれた団扇をもらっていたが、忘れず持参してきたらしく、アサッテの方角に団扇を向けてポーズをとっていた。
余裕やねと話しかけるとそうじゃないらしい。

「これ、インタヴュー、聞かなきゃ。どうしましょう?」

そうなのだ。
われわれ大阪チームは日本出発前に王様から重要なミッションを受けていたのである。

『海外のソープレイヤーから日本の鋸奏者にメッセージをもらってくるべし』

年末に(2004年11月)大阪で行われる日本初ののこぎり音楽祭の為の前振りでもあったのだ、この旅は。

「わはははは。私英語わからんから、インタヴューは君に任せた」

「私だって話せないですよう」

「R2さんがいるじゃん」

「嫌~!ウチひとりに押し付けんといてえ」

「こうなりゃ雀さんも一連托生や」

「ええええええええ?」

「さあ、このカンニングペーパーを持つのじゃあ」

「そうじゃー読むのじゃー聞くのジャー」

質問の内容は
・のこぎり音楽を始めて何年?
・この楽器の魅力は?
・日本のプレイヤーにメッセージを
てなぐあいの簡単なものなのだが。
・・・・・・・ふう。
初対面の外国の人に気安く話しかけられるような度胸の持ち主などこのメンバーにはいない。

こら、笑うんじゃない。
こっちは緊張でテンパッテいるんだから。

例によって二台の車に分乗して会場へ。
でもって例によって道が判らなくなって必要以上時間をかけて到着。

パーティー会場というからどんなところかとどきどきしていたら、明日の大会会場「ローリングキャンプ」の駐車場。
明日の出場者たちのキャンピングカーが何台か並んで止まっていて、その持ち主たちが車の中からテーブルや椅子を引っ張り出していた。
会場に向かう途中で買い込んだ惣菜やフルーツをテーブルに並べていると、そのあいだにもほかの参加者たちがぞろと手土産を持ってあらわれた。
手作りサンドイッチ
サラダ
クッキーにアップルパイ
ジュース
ビール
・・・誰や食べかけのピザ持ってくる奴は?

てんでに好き勝手に飲み食いをはじめている。

よござんす。
私も好きにさせてもらいます。

浴衣の袖をからげて筆者もテーブルの上のご馳走に手を伸ばした。

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過去ログいよいよ始まる鋸祭   [ アメリカ決戦2004 より]     

サンタクルーズの町の功労者TOMじいさんの銅像が道端に建っている。
ごく自然にのこぎりを膝に挟んでなにかを奏でている。
不思議と自然な風景。
商店街で買い物を楽しむ人々が通り過ぎてゆく。
いつもは静かなこの通りも今日はにぎやかだ。
銅像の前に何処から持ってきたのかたくさんの椅子が設置され、のこぎりやギター、バンジョー、ヴァイオリンにフィドルという楽器を手にした人々が腰掛けてのんびりと寛いでいる。
のこぎりフェスティバル前夜祭の始まりだ。

IMSA(International Musical Saw Association )の垂れ幕が、さりげなく向かいの書店に掛けられていて、その前にひときわ背の高い銀髪男性の姿が。
IMSA現会長のモーガン氏だ。
何を言っているのかさっぱりわからないが、どうやら君たちも一緒にセッションしないかと誘ってくれているようだ。
わーい。
ヴィデオの撮影は男性陣にまかせて筆者とまいどちゃんはそそくさと椅子へ。
日差しが眩しく目をうまく開けていられない。
それでもなんとか目をこらすと
をを!
前IMSA会長チャーリーブラックロック氏が
世界一流のSOWプレイヤー、デヴィットワイズ氏が
目の前に。
きゃああああ!
テンションはいきなり急上昇である。

筆者も鼻息荒くのこぎりをケースから取り出し、いざ合奏へ。
・・・・ところが知らない曲ばっかり演奏するのだな皆。
アメリカ人だから誰でも知っている曲をやっているのかなと思ったがそんなこと関係なしらしい。
誰かが
「****弾きます~」
と言って、勝手に演奏していてもし自分も知っていたら適当に混ざってもいいよ~、てなぐあいの、まことにユルイセッションである。
ええのか?
なんとものこぎりらしい。

そのうち、日本人が大量にやってきたことに気がついた誰かが「荒城の月」の伴奏を弾き始めた。
これは参加しなくては。
1コーラス目はマレットで叩いてホット師匠に敬意を払い、2コーラス以降はみなのように弓で奏でる。
燦燦と降り注ぐ太陽の下、妙にご陽気な「荒城の月」が街中に流れる。
滝廉太郎もまさか自分のこの曲がこんな使われ方をするとは思ってもいなかっただろう。
調子にのって「さくらさくら」「きらきら星」とベタなナンバーを続ける。
アメリカのプレイヤーも参加して盛り上がる。

日本の男性陣も撮影に飽きたのか我慢が出来なくなったのか、のこぎりを構えて乱入してきた。
実にいい感じ。
買い物帰りの地元の人たちに手を振りながら時間がゆったり流れて行くのを筆者は感じていた。

過去ログあれこれあります、ノコ奏法   [ アメリカ決戦2004 より]     

さて、アメリカ2日目は皆で水族館に遠足にいったのだがここでは割愛。
おっちゃん壱号の先導で車二台で出かけたのだが、壱号さんたら思い切りのいい方向音痴なので付いていく我々は大変な目に遭ったことだけは書いておく。
素人の私でさえ「一方通行逆走」とか「右ウインカーを光らせて左に曲がる」のはどうかと思うぞ。


で、3日目。
フェスティバル前夜祭。
流石に今日は練習しなきゃまずいので、モーテル近くの公園で朝練習に全員で繰り出すこととなった。
公園はほどほどの広さで清潔でいい感じ。
ベンチや東屋へそれぞれ散って練習開始。
とはいうものの、まだ頭も体も寝ぼけているのか楽器を奏でるもではいかず、とりあえず鳴らしてます状態で明日のフェスティバルがちと不安。

たらすなさんは親指故障中でテーピングぐるぐるだし
ナンデモさんはテルミンが気がかりで仕方がないし
R2さんは主旋律やハモリの練習ができひんようと涙目
まいどちゃんと筆者は二人のリズムのコンビネーションが合わずため息ばかり。

草々にレッスンに飽きてしまった東京おっちゃん三人組は、カメラやヴィデオでお互いに撮影をはじめるしまつ。

ゆるい。
これこそノコ音者。

おっちゃん参号が、比較的真面目に練習している雀さんのスチール製弓に着目、さっそく練習の邪魔・・・じゃなかったヴィデオインタヴューにやってきた。

東京組はヴァイオリンの弓や「ソーヤー谷村モデル」弓を使用。
演奏する時も弓に松脂を塗ってから、弾く直前に水で湿らせたスポンジでサッと毛の部分を撫でるというソーヤー谷村式奏法を忠実に守っている。
何故水で湿らせるのかというと、こうするとノコと弓の摩擦音が少なくなって綺麗な音色が引き立つかららしい。
ただこれ、室内ならともかく今回のような野外で、しかも夏場ということになると、あまり役に立っていなさそうである。
ヘタすると一曲弾いている途中で弓が乾いちゃって大変めんどくさいことになりかねない。
明日の大会はどうするんでしょうね。

おっと、こんどは参号さん、筆者の方にやってきたぞ。

「こんどは大阪のみなさんです、おや?これは変わったものでのこぎりを叩いていますね」

ナレーション付きである。

「マレットですよ、これで叩くんです」

筆者も親切に解説にまわる。
どうも東京組は『叩く』奏法はご存知ないらしい。
横山ホットブラザースの名ギャグ
♪お~ま~へ~は~あ~ほ~か~?
を実演してもキョトンとしている。
ちなみにこの参号さんは定年退職後、玉すだれの芸でボランティア公演をまめにしている芸達者さんなのだが、しらないんですか、マジで???
関西人には信じられないリアクションである。

弓を自作するというのもかなり珍しがられた。
大阪組の女子(笑)三人が習い始めた時に手にいれたノコはミュッセル&ウエストファル社26インチセットで、付属の弓はヒッコリーの板(幅2センチ長さ60センチ程度)に釣りテグスを張ったもので、糸が痛んだら自分で取替える様式になっている。
これを基本として持ち手素材の改良やら糸の張り方の工夫を自然にマスターしていたので「弓は自分で作れてこそ一人前」と筆者達は信じていたのでそんなに不思議がられると意外な感じがする。

雀さんも自分で作る派だ。
流石に鉄板は自分で切れないのでお店の人に図案をわたして切ってもらったそうだが。(めちゃくちゃ嫌がられたらしい。だろうなあ)

このときの筆者の弓は、ホームセンターで1メートル140円で買ったコードカバーをキッチン鋏で適当にぶった切ったものに、糸を引っ掛ける切れ目を二箇所入れ、2号サイズの釣り糸(しかも色は蛍光ピンク!)を120本ほど束ねて掛けただけ。
なめているのか世界大会。
でもこれ、けっこういい音するのだな、不思議なことに。
まいどちゃんのは持ち手も短い小回りが効くタイプ。
R2さんは糸の並びも美しい芸術品のような自作品。
たらすなさん、ナンデモさんはノコの種類もサイズも違って弓もヴァイオリンの物を転用。

ちょっとノコ者が集まっただけでこの違い。
なかなか奥が深いものである。

過去ログ♪俺はお前を揺さぶる   [ アメリカ決戦2004より ]    
ゴン ゴン ガン♪
ゴン ゴン ガン♪
ゴン ゴン ガン♪
ゴン ゴン ガン♪

なんじゃら ほいじゃか もにょもにょもにょの
かっぺっぺーのどっこいせー・・・・


いや、筆者の頭がおかしくなったわけではない。
大阪、東京、名古屋の日本チーム(除くHAJIさん)が無事合流できたのでシーフードレストランで夕食会を楽しんでいた時の珍事である。
海辺の、窓の外から野生アザラシや野生ペリカンを見物できるような、いい感じのレストラン。
ウエイターのお兄ちゃんがアッカルーイのはアメリカらしいけど味付けはシンプルでまあ、おいしい部類にはいるかなと、もぐもぐ租借することに熱中していた筆者の背後からそれは聞こえた。
私の席の後は仕切りで、裏は厨房。

ゴン ゴン ガン♪
ゴン ゴン ガン♪
ゴン ゴン ガン♪
ゴン ゴン ガン♪

この妙に耳馴染みのいいリズムは・・・

♪ういーういる ういーういる ろっちゅー!

あの・・お店のおにいさん達。
まだ私ら客残ってるんですが、もう出来上がっちゃてますか?
ビール呑みながらクイーン熱唱ですか。
っていうか、コレぐらいの英語も聞き取れなかったのか私。


アメリカ旅行中はほとんどTVは観なかった。
中国へ行った時は情報は熱心にチェックするのだが、どうも興味が湧かない。
せいぜい車で移動しているときのカーラジオに耳を傾けるていど。
それもチャンネル権はハンドルを握る男性にあったので、最新全米TOPチャートなんてものはまず聴いていない。
妙になつかしいロックばかりが旅の友だった。
ちょっと勿体無い。

音楽を演奏という形で提供する立場に立たされて、演奏するってことは只楽器を鳴らせば良いということではないのだと、耳に痛いほど各方面から指南をいただいた。
あさってはノコギリ祭り前夜祭で、次の日は本番。

♪俺はお前を揺さぶる

私たちの演奏は聴いてくれる皆の心を揺さぶることができるのだろうか。

♪俺はお前を揺さぶる

今日は練習をしていない。
まあ、仕方が無いな。

♪俺はお前を揺さぶる

明日は遠足で水族館に行くらしいし。
いいのか、ヲイ。

♪俺はお前を揺さぶる
♪俺はお前を揺さぶる

なんだか筆者自身プレッシャーに揺さぶりをかけられてきた。


♪俺はお前を揺さぶる・・・

明日もいい天気なんだろうな・・・。

過去ログ旅は道連れ道ハズレ   [ アメリカ決戦2004 より]     

ようやっとモーテルへ到着。
さらにチェックイン時に言葉の壁にぶつかる。
すっかり乗り物酔いでグロッキーな筆者は進んで荷物番に。
あう・・・・・。
遠かった。
お前が言うなというツッコミもなく全員へれへれとお部屋へ。

このモーテルで東京からおぢさん3名と名古屋からおネーさん1名が合流予定なのだが、とんと姿は見えず。
おっちゃんはともかくおネーさんとはしばらくのあいだ同じ部屋に泊まることになっているので、ちょい不安。
人見知り激しいからなあ。
(嘘つくな)

コンコンと軽やかなノックとともに
彼女達はやってきた。

「どーもー!雀(源氏名)でえええええええええす」

「うっわー何だこのハイテンション女は」

ドアの前で狼狽するR2さんに名古屋嬢は

「ちえーい、パンチだー!」

「なんの、クロスカウンター!」

「レフェリー」

「ワン・ツー・スリー!カンカンカン」

「アイム・ウイナー」
勝利のポーズ。

「待て待て、勝ったのはアタシ」

「いえいえアタシ」

「・・・・あの、本当に名古屋からいらっしゃった方ですか?難波あたりにお住まいではなく」

「ノリ、良すぎ」

「えー?普通ですよ」

いやふつう違いますよ雀さん。
挨拶もそこそこに、初対面でクロスカウンターですか。

後に控えているおっちゃん壱号、弐号、参号もクセのありそうな雰囲気が。

「やっ、どーも」

「ど・・・どうも」

大阪勢旗色悪し。
にわかにパーテイは大人数になって・・・・・だいじょうぶかヲイ。

過去ログ[ アメリカ決戦2004より ]    
***ファーストクエスト   ***

サンフランシスコ空港に着いただけで、もう既にメンバー全員へろへろである。
飛行機の中って眠り辛いよう。
時差もあるし荷物カウンターでのごちゃごちゃがドドメだったなあ。
はやくホテルへ行ってゆっくりしたいよね。

さてこの貧乏旅行、アメリカでの移動はレンタカーでGOGOという事になっていた。
たらすなさんとナンデモさんは予め日本で国際ライセンスを取得。
空港で車(これも日本で予約済み)ゲットしたらホテルまで一直線だ、わーいわーい。

・・・・・・そんな簡単に事がはこぶ訳ゃないでしょう。

言葉の壁に四苦八苦してようやっと車のキーを手に入れたら、今度は荷物が車に積み込めない。
6人乗りの小型ワゴンがこんなに聞き分けが悪いなんて。
ゴン、ガン、ゴゲン!と無理やりサブシートを折りたたみテトリスの様にスーツケースを捻りこむ。

「ううっ、だれやこのカバン、むちゃ重い・・・・」
それは私です。

なんとかかんとか全員乗り込み。
車が発車します、オーライ。

「ふいー」

「これからどっち行くの」

「ルートナントカをまっすぐだよね」

「道どれ?」

「空港で貰った地図見よ」

「って、道どれ?」

「うわー大雑把」

「とりあえず空港から離れたいんだけど」

「その離れたはずの空港がなんで向かいからこっちへ・・・」

「戻ってる!道戻ってる!」

「じゃこっち・・・って駐車場やあ」

「じゃあこっちの道は」

「別の駐車場・・・」

「アカン、地図買おう地図」

「どこかコンビニあるの?」

「それも判らん」

「また空港に戻てる~」

「ここはどこやあああ」

「・・・・・ぐーぐー」

「って寝るなああああ」

「・・・・んごがー」


勇者不在のパーティ
時魔道師レベル1
白魔道師レベル1
吟遊詩人レベル1
僧侶レベル1
遊び人レベル1

・・・・始まりの町でいきなり遭難。

過去ログ  [ アメリカ決戦2004より ]
***税関かんかん(前編)***
    
プロミュージシャンというものは常に自分の楽器とともに行動する。
コンサートツアーに出かける時は特に楽器の取り扱いに注意し、できうるかぎりは己の手でベストの状態を保ちながら運搬したいと考えている。
飛行機や列車に乗るときは、わざわざ楽器のために座席チケットを買って並んで一緒に次の目的地まで、という話も珍しくはない。

楽器は友達。
もしくはそれ以上の存在なのだ。

だがしかし。
これが「のこぎり」だから話がややこしくなる。

映画や小説で殺し屋が楽器ケースに武器を隠し入れて旅をする・・・てなシチュエーションはよくあるが、今回の旅行は普段凶器扱いされているものを楽器として愛好している者たちの集団なのである。

アホだ。


八月某日。関西国際空港。
冒頭から筆者は遅刻した。
あまりにもベタすぎる滑り出しである。
しかも声が潰れてしまって話せない。
懐から電子辞書辞書をとりだして
「ごめん」
「すまん」
「ゆるしてくれ」
「かんにん」
と、ポチポチ打ち込んで人に見せるありさま。
だああああ、うっとおしい!


「さてと、こんなもんかな」

たらすなさんが、きゅっと荷造りひもを結んだ上から
『取り扱い注意・楽器』
と二ヶ国語で大書きしたステッカーを貼り付けた。
スノボ用ソフトケースに皆のノコギリをまとめて収めて
これから荷物として貨物室に入れてもらうのだ。

「大丈夫かなあ」

「結構乱暴に荷物を取り扱うってはなしだし」

「楽器って書いてあるから大丈夫っしょ」

「楽器かあ・・・・」

普通は凶器だよなあ、刃渡り26インチのノコギリって。
気分的には手荷物扱いしたいんだけれども、コレばっかりは無理。

あたりまえだ。
どこぞのアホが次から次へと物騒な騒ぎを巻き起こしてくれるから、空港は必死で「ややこしいものは排除」している。
筆者を含むノコ・オケメンバーはあからさまに怪しい一行なのだから、揉め事は起こさず穏便に、腹の中で今畜生と思っても顔には出さず、ニコニコと出国しようぜと話はまとまっていた。

・・・・・・なにごともありませんように。

どきどきしながらの荷物検査。
HAJIさんは仕事の都合で別便でくるので、先発隊は全部で5名。
きゅるきゅるきゅーとX線捜査を受ける。
先の4名は何事もなく通過。
ノコもするっと通過。
最後に筆者・・・が捕まった。

「手荷物の中に鋏がありますね」

「は?」

ソーイングセットはスーツケースの中のはずだが。
一人だけ引き戻されてカバンをしらべなおすと、あった。
ソーイングセット用のミニ鋏が底板の隙間に落ちていた。
よくもまあ、こんな小さなもの見つけられるものだ。
プロだよなあ。

カバンを詰めなおして再度チェック。
OK。
はー、やれやれ。

「らく乃ちゃん、どしたの?」

「あはは、ちっちゃい鋏入ってた」

「たのむで、しっかりしてや」

「あーもう平気、こっちのもん」

「ノコギリもなんとも言われなかったし良かったね」

はははは。

なごやかに話しているツアーメンバーの背後に
つかつかつかと係員が寄ってきた。

「お客様、申し訳ありませんが、今一度皆様のスーツケースをお返しいたしますので、中を開けていただけませんか?」

はいー?????



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主筆者紹介
HN:
いちもんぢ らく乃
HP:
性別:
女性
職業:
危険物楽器扱業
自己紹介:
見たまま怪しい奴
ではありますが
無害です



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