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のこぎり莫迦につき危険なり取り扱い注意
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2004吹田メイシアターフェス ログ

舞台の上に椅子が一脚。
ピンスポットが当たっている。
のこぎりを手に携えて登場した男はサキタハヂメ。
人気インストルメンタルデュオ『はじめにきよし』のギタリストである。

椅子に腰掛けるとピアノの伴奏が静かにながれはじめた。
曲は「ホーム、スイートホーム」
和名は「埴生の宿」

無骨なのこぎりの姿からは信じられない、かそけく美しい音色がホールに染み渡る。

サキタ氏は膝でノコギリの柄の部分を挟み、のこの背のつるつるした面をヴァイオリンの弓のようなもので擦っている。
のこの背がいわゆる弦の役目をしているのだ。
氏はときおり膝をふるわせては紡がれる音にビブラートをかけている。
その姿はまるっきり貧乏ゆすりそのものなのだが、その気の抜けた演奏スタイルこそがのこぎり演奏の最大の特徴。

お間抜け。
お気楽。
そして優雅。

演奏が終わると場内からは感動のため息と惜しみない拍手が演奏家に送られた。


「みなさま、本日は日本のこぎり音楽協会関西支部発足10周年記念特別企画『ミュージカル ソウ フェスティバル イン ジャパン~魅惑ののこぎり音楽祭』にお越しくださいましてありがとうございます。」

いつもはのほほんとしたサキタ氏の話声にも今日は流石に緊張の色が見える。
だが、本人はとても嬉しそうだ。

この日のために誂えたスーツをびしっと着こなした、のこ音関西支部長にして本日の仕掛け人は観客に語りかける。

「どうぞ楽しんでってくださいね。」


「ではまず最初のゲストをお招きいたしましょう。
都家歌六師匠です。
拍手でお出迎えください!」

紋付袴を粋に着こなした爺様が、オツムをぴかりんと光らせながら舞台袖から登場した。

「や、どーもどーも。」

のこぎり演奏暦40年の大ベテランは気さくに観客に応じる。

都家歌六。
日本のこぎり音楽協会会長。
噺家で俳優でレコードコレクター。

「ではまず一曲。『雨のブルース』、のこぎりの音が淡屋のり子さんの歌声にきこえたらご喝采を。」

びゅるおーん
ひょーん
ひゅるひゅおーん

さきほどの飄々とした物腰からは想像もつかない激しい演奏。
貧乏ゆすりもゆすりっぱなしで、履いている雪駄ぺたぺたと足から逃げて行きそうだというのは大げさか。

びょるるるるーん!

キャバレーの喧騒をも掻い潜るという爆音でありながら、まるで本当に淡屋のり子が歌っているかのようなしっとりとした情感が聴くものをとらまえる。

「いかがだったでしょうか?」

もちろんの拍手喝さい。

 

ステージは好調なスタートをきった。



「のこぎりってえのは、オバケの音によく使われますな。」

と、のこぎり音楽についてのレクチャーを始める歌六師匠。

「こおーんな音が出るってんですからね」

ひゅるるるおお~ん

「うらあめーしーやあー」

ひゅろるろるるおお~ん

「ィヒーッヒーッヒー」

ひゅろるろるるおお~ん

「うけけけけけけけ」

ひゅろるろるるおお~ん

「ヒャへー!」

怖いです師匠。
場内びびってます(爆笑)

気をとりなおして次の曲。
師匠お得意のアルゼンチンタンゴ。
「ラ・クンパルシータ」

♪スッチャッ チャチャ チャララランラン

情感豊かに奏であげて、にこやかに退場。

 

続いてはジャパンミュージカルソークラブ会長、ソーヤー谷村氏が登場。
めがねと髭とベレー帽とくだらないジョークが特徴。

まずは定番「グノーのアヴェ・マリア」
歌六師匠とはうってかわって、コチラは正確無比な音程で几帳面な演奏。
のこぎりといういいかげんな楽器でここまでかっちりした音色がだせるのかとひたすら感心。
ゆったりとした空間を作り上げている。

そして二曲目は軽快に「オリーブの首飾り」
開場から自然に手拍子が。

軽やかにひきこなして、ソーヤー氏退場。
今回の舞台ではジョークを控えた模様。
ちょっと残念。


「それでは次は関西支部の仲間たちを何組かご紹介しましょう」

サキタ氏の司会は進む。

「らく乃さん、どうぞ」


それは関西支部がひたすら世間から隠していた大量破壊兵器が世に放たれた瞬間でもあったのだった。

 

 


 その頃舞台袖では
「なあ、なあ、ホンマにやるの?」
「やりますよ、やらいでか」
「無理せんでもええんよ」
「でも折角つくってくれはったんやし、つかわな勿体無いって」
「笑われるで」
「かましません、笑われてナンボや」
「なら、ええねんけど」
「景気よく頼んます」

「よし、スタンバッて、GO」

「らく乃さん、どうぞ」

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主筆者紹介
HN:
いちもんぢ らく乃
HP:
性別:
女性
職業:
危険物楽器扱業
自己紹介:
見たまま怪しい奴
ではありますが
無害です



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