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のこぎり莫迦につき危険なり取り扱い注意
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2004吹田メイシアターフェス ログ

「関西のこぎりオーケストラと素敵な仲間たちです」

コンサートもいよいよ大詰め。
世界唯一ののこぎりオーケストラが登場した。

ちなみにゲストミュージシャンは
ピアノ 小松なお子さん
ベース 岩田昌さん
パーカッション 山村誠一さん
ヴァイオリン 内山ふみさん
チェロ 田中愛さん

どうもありがとうございました・・・・って演奏はこれからやんか。

「剣の舞」
ハチャトリアンの代表作。
サキタ氏の『だって俺らのこぎりやねんもん』のひとことで無理やり決定してしまった課題曲。
撃速テンポについていけるのか?
アメリカで演奏したときよりも人数増えています。
アレンジも激しくなっています。

「スリー、フォー!」
♪どんが がっが がっが がっががっが

ピアノは小松さんとノコオケメンバーさやや(白い妖精/笑)の連弾で激しく伴奏を打つ。

パーカッションも入ってにぎやか。

♪ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ・・・・・

正確にメロを刻むリードノコ・サキタ。
それにかぶさってゆく第一第二ノコ。

♪ちゃーららー
(ひゅるひゅおーん)
♪ちゃーららー
(ひゅるひゅおーん)

メロデイ隊とフィルイン隊の掛け合いもあざやかだ。

あっというまに最終章へ。
最後の一音までピタリと全員の気持ちが重なった。
良いできだ。

オーケストラのメンバーがさらに増えてゆく。
筆者もここで合流。
ソロ演奏の時と違って一回り大きいアルトパート用のこぎりを使うのだ。

チチさんもウクレレを持って再び登場。
サキタ氏と並んで舞台中央へちょこんと腰掛ける。

「この曲は10年前から大切に演奏し続けていた曲です。
そのときそのときに合わせて何度もアレンジを改良しました。
今日このときにふさわしい出来だとよいですが。
パッヘルベルの『カノン』」

チチさんのウクレレが静かに流れ始めた。
一コーラスのちにヴァイオリンが
その後にピアノが
やさしく やさしく 音を重ねてゆく。

のこぎりの音もミルフィーユのように
ふわり ふわりと重なってゆく。

演奏中の筆者はその音のシンクロ率の高さに鳥肌が立っていた。
のこぎりでこんなに正確に音を重ねられるなんて。
本当によく練習したものである。

弓の運針(上下運動)のきれいに揃っている。

フレーズが重なるごとに音色も強く力強く
そして儚い終章へ

♪ふぁら~ん

一種のトランス状態に開場は包まれていた。

何拍かの沈黙。
そして盛大な拍手。

ブラ-ヴォ!
ブラーヴァ!


「ありがとうございました!」

舞台の上から感謝のあいさつ。
「名残惜しいですが最後の曲です」

え~っ?。
まだまだ足りないよう。

「キャラバン!」
ノコからギターに持ち替えたサキタ氏が叫ぶ。

♪ジャ~ン(じやかじゃかじゃかじゃか~~~~~)
「ハ!」

アラビアチックなジャズのスタンダードナンバーがにぎやかに始まった。
舞台のノコの数は先刻よりもさらに増えている。

ツッツちゃか ジャカジャ!
とノコの刃をスティック(材料は傘の骨!)で擦るギロ隊が追加。

コーンコン コーンコン!
弓からマレット(バチ)に持ち替えてベース隊も出現。
リズミカルに楽しく華やかにもりあげている。

メロデイ隊もにこやかに弓をふるう。

サビ部分になるとギロ隊はステップも軽やかに踊り始め、開場はさらに盛り上がる。

チチさんも嬉しそうにウクレレをかき鳴らす。

サキタ氏もアホの一つ覚えダンスを踊り始める(笑)

♪ジャーッ ラッチャ チャチャチャチャ!
盛り上がって
♪ジャーッ ラッチャ チャチャチャチャ!!
盛り上がって
♪ジャーッ ラッチャ チャチャチャチャ!!!

決まった。

割れんばかりの拍手のなか、幕は下りていった・・・・・

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2004吹田メイシアターフェス ログ


「みなさんお待たせいたしました、横山ホットブラザーズです。」

やはり地元は違う。
観客席は大歓迎で彼らを迎えた。

♪わわ~(あ、よいしょ)
わわ~(あ、こりゃ)
とかく この世は ほがらかに~
笑う角には 福が来る~
歌うかどには (アコリャ ヤッコラマサ ドッコイササ 
ヤッコラ コリャ・・・)

「やかましい!」

♪歌って 笑って ホットブラザーズ~

オープニングテーマだけで場内大爆笑。

これ、これ。
これなんである。
マンネリなんて言わせない。
我らがホットブラザーズの芸なのだ。

「えー、日本のこぎり音楽協会関西支部発足10周年オメデトウゴザイマス」

「なんか おくれ~」

『ギターは弾くもんやない、叩くもんや』とうそぶくブラザーズ長男アキラ師匠を真ん中に、舞台向かって左、アコーデオンの次男マコト師匠、右がわギター三男実生活では五男)セツオ師匠。

結成50周年以上の大ベテランのトボケタ掛け合い漫才がつづく。
三人ならんでいるけど、マイクは二本。
「コイツ(セツオ師匠)なんもしゃべらんからマイクいらん」
というお約束ギャグも律儀にふまえて。

「いつものアレ、やろか~」

お父さんのトウロク師匠から譲り受けたという60年もの(!)の鋸を取り出して椅子に腰掛けるアキラ師匠。

「はい、みなさんご一緒に」

♪おーまーえーはーあーほーかー

(と、いう大阪弁のイントネーションを音で表現する師匠)

これ以上無い脱力したノコを叩く音。
そして必要以上に「ぷるぷるぷるぷる・・・」と動くアキラ師匠のオモロイ顔。
関西の老若男女誰もが知っている、誰もが大好きなギャグである。

おーまーへーはーあーほーかー♪

もちろん場内大合唱。
こんな機会のがしてたまるものか、一緒に言わねば末代までの恥である。
(大げさな)
このギャグは無形文化財として後の世に伝えなくてはならないと筆者は思う。

「荒城の月」という定番曲に加え「川の流れのように」もギャグを織り交ぜて熱演。
いつもはこれだけのところ今日は大サービス。

「のこぎりのコドモ持って来たデ」

チビのこぎりで
♪おまえはあほか
「こどもののこぎりでこどものうた」

こんここ こんの すっこんこん!
と可愛い音で「ちいちい ぱっぱ」

「まだあるで、おとーさんのこぎりや~」
巨大なノコをひっぱりだしてきて。

♪ぼよおおおおおおん
低い音でやはりオマエハアホカ。

「これでなにやろか」

「『ハイ それまでヨ』なんてどないや」

「まかせとけ」

♪あなた だけが~
ぼぼぼぼーん
♪生きがい なの~
ぼぼぼぼーん
♪おねがい~
ぼぼぼぼーん
♪おねがい~
ごごごごーん
♪すてーなーいーでー ってなこといわれてその気になって・・・・
(このあと曲は急テンポに)
ぼご ぼげ ごが ぼが
ごんごご ごげ ぼご

「うーわ!」

いきなりのこぎりを投げ捨てるアキラ師匠。

「こんな速い曲やってられんわい!」

♪うたーって わらーって ホットブラーザーズー

じゃ じゃ じゃーん


「ありがとうございました」

サキタ氏がマイクを手に三師匠と言葉をかわす。

「せっかくなんで我々オーケストラと一緒に一曲お願いできませんか?」

「ええな」

「『六甲おろし』なんかどないや?」

舞台袖で笑いをかみ殺していたノコオケメンバーに緊張がはしる。

「一グループ入って」
指示が出る。

椅子とノコ一式を携え、先発メンバーが師匠たちの後ろに並んだ。
全員白いトップに黒いボトム。
男性は蝶ネクタイもつけてフォーマルスタイル。

いよいよ関西のこぎりオーケストラの活躍がはじまったのである。

♪じゃんじゃーかじゃーん
マコト師匠のアコーデオンがおなじみのあの曲のイントロをかなで始める。
開場はノリノリの手拍子。

♪ぽよよーん ぽんぽん ぽーん ぽよ-ん

アキラ師匠がいつものノコで気の抜けた音色で
(でも顔は真剣!)
メロデイを叩くと、のこオケは

♪ひゅーるるん

と、合いの手をいれる

「はーん しーん タイガース!」

「フレー フレフレ フレー!」

一度も合同練習したことがなかったのだが、なんとか最後まで演奏できた。
やれやれ。

「では〆に。さんはい!」

師匠とオケ一緒に
♪おーまーえーはーあーほーかー

喝采を浴びて三師匠たちは舞台袖へと帰っていった。

2004吹田メイシアターフェス ログ

客席の灯りが再び落ちてゆく。
舞台中央にすえられたスクリーンに映像が映る。

ひゅーん
ひゅるろーん

のどかなノコの音


「というわけで第二部です」

「そやね」

舞台に再度登場サキタハヂメ。

あ、お色直ししてる。
やや、隣に座っているあのクロメガネはチチ松村氏。

チチさんも今日はビシーっとタキシード姿。

「君ら、ほんまに何処でも行くな~」

口調は相変わらずのんびりですね。

「これは今年の旅行?」

「アメリカのね、世界大会行ってきたんです」

流れるヴィデオをみながらの二人のゆるーいトークがはじまった。
第二部の幕開けである。

ヴィデオの内容は、アメリカ演奏旅行顛末記。
汗と涙と努力の結晶。
その割には、インタビュー映像割愛されていたな。苦労したのに。
ヴィデオのなかでひょこひょこ踊るサキタ氏とトーマスのスイカ割りが受けていた。
ゆるゆる たるたるな時間が過ぎて。

「ではチチさんに演奏していただきましょう」

をををををを。
この機会を待ってました!

GONTITIのギタリストチチ松村の隠されたもう一つの顔が、いまあかされる!

はっきり言おう。
筆者はチチさんがノコを演奏しているところを一度も見たことが無い。
のこぎりイヴェントではよくご一緒させてもらっているが、いつもチチさんはギターかウクレレである。
のこぎり音楽協会関西支部の部員の証『ピンク色の鋸紋つき浴衣』を所持しているにもかかわらずである。
ほんとーに弾けるの?(<酷)

「オリジナルの歌弾きます~」

鋸をかまえてヴァイオリンの弓で・・・・・・

♪ひゅる~ るる~ん
♪ひょろ~~~ろろ~ん

・・・・・・・・・・。
疑ってごめんなさい。
チチさん無茶苦茶演奏巧いです。 
変な力みが音にない、なんとものびやかな演奏である。

♪もーだれーもー いなーいー

しかも弾き歌い!
おそれいりました。

♪ぼくはー ひとりぼーっちー

それにしてもこの御仁、なんで目出度い席にこんな暗い歌をセレクトするんですかね。
歌の中で人死んでるやんか(苦笑
確かクリスマスライヴでも人が死ぬ歌歌ってたし。
(注:この「目出度い席で暗い歌」シリーズは今だ現在続いてます。
すでにお家芸です

「牧歌的な音のする楽器(例:ウクレレ)で暗い曲演奏するのが好き」
だそうです。
「暖かい国の楽器(例:ウクレレ)で寒い国の曲弾くの大好き」
でもあるそうです。
このへそまがり。

ひょろるーんと余韻を残してチチさんの演奏は終了。

舞台の下も舞台袖も惜しみない拍手を送ったのでした。

2004吹田メイシアターフェス ログ

舞台のライトが消え、客席が明るくなった。

軽く伸び一つ。
小腹が空いたな、さっきもらったドラ焼きをカバンの中から出そうか。

♪ぴーん ぽ-ん ぱーん ぽーん
ご来場のお客様に申し上げます
ホール内でのご飲食はお断りいたしております
ドラ焼きをお召し上がりになるさいは
かならずロビーにてお願いいたします
♪ぴーん ぽ-ん ぱーん ぽーん


・・・・・・・行動見透かされている。
って、いうか今の声、どこかで聞き覚えが。
誰だっけ?

2004吹田メイシアターフェス ログ

アホがひとり舞台からおいだされて。

「"ゴールデン フライ"のみなさんです。」

紹介されて登場したのは男性1名女性2名のユニットである。
男性はギターを女性は鋸を手に携えて椅子にこしかける。

三人とも黒いタートルネックに色違いのハンチング帽子。
中々のおしゃれさんだ。

彼らは通称「ゴーフラ」と呼ばれている。
主に京都方面でライヴ活動を展開中でほっこりとした和める演奏が人気である。

曲のタイトルは「kai」

ギターの伴奏に二本のノコぎりの音が浮遊するようにからまってゆく。
ノコの性質上、ハモることは大変難しいのだが、彼らにはなんの不響も見られない。

ふぃよーん ふゅおーん
ふぁららららららら

これはマレットで叩かず弓で奏でるからこそ出せる不可思議なハーモニーだ。

ふぁー ふぃよーん
ふぁららららー らー

開場中が静まり返って聞きほれている。

曲がおわってからもしばらく余韻に浸りたい、そんな演奏だった。

 

ゴーフラが退場して、サキタ氏が次のグループを紹介しようとマイクをにぎると
「な、なんや、なんや君らは?」

ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ

全身黒尽くめの集団が一列になって舞台に現れた。
だれもかれも無表情で、一言も語らない。

ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ

彼らは舞台に上りきっても行進を止めない。
舞台の上に円を描いている。

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる

周りを明るく照らしていたライトが消えた。

ぽうっと一箇所だけが光っている。
彼らのうちの一人が舞台中央に不思議な形をしたランプを灯したのだ。
ランプを囲むようにして、集団は舞台のうえに正座をしてノコとマレットを構えた。

ぼーん ぼーん ぼーんぼーん

ンカカ ンカ ンカカ ンカ

コーン コン コーン コン

じゃかじゃか じゃっじゃか じゃかじゃか じゃっじゃか

ノコギリの形状や叩くバチ、演奏法の違いにより様々な音色がきこえてくる。

「ほっ!」

掛け声とともにメロデイが始まった。
ロシア民謡「カチューシャ」だ。

びゅおーん びょびょーん
ここんこ こんこん

暗いライティングと哀愁漂うメロデイがなんともいえない異様な雰囲気をつくりあげている。
まるで何かを魔法で召還しているようだ。

1コーラス目が終わった。

「はっ!」

2コーラス目はテンポが上がっている。

「ひょっ!」

3コーラス目になるとさらに演奏スピードは加速する。

「ヒョホー!」

ンカ! ンカンカ!

「ホッ ホッ!」

ぼーん ぼーん ぼーん!

「ハッ! ホッ!」

ゴンガ ゴンガ ゴンガ!

ガンガン!!


ぴ・たと全員の動きが止まる。

終わったのか?
拍手しかけると。


「ホー!」

ごが ごが ごが ごが ごが!
びーよよ びんよー びーよよ びんよー!

さらにテンションの高い演奏がはじまった。

ごが ごが ごが ごが ごが!
びーよよ びんよー びーよよ びんよー!
ごが ごが ごが ごが ごが!
びーよよ びんよー びーよよ びんよー!

もう誰にも止められない。

最高にもりあがったところで

がっ!と演奏は止んだ。
こんどは本当に終わったらしい。

割れんばかりの拍手の中、集団は一礼の後再びぐるぐると円を描いて行進をはじめた。
そしてするすると舞台袖の法へと消えていった。
不思議なことに中央に据えてあったランプもいつの間にかなくなっていた。

「カチューシャ2004でしたー。」

ここでサキタ氏は再びノコを持って登場。
弓をつかって
『君と旅立とう』を叙情豊かに弾きこなす。

ここで第一部は終了、一旦休憩となった。

2004吹田メイシアターフェス ログ

「らく乃さんです」

司会に呼び出されて舞台袖から登場した人物を目にした客席にびみょ~~~な空気が漂った。


「・・・・・?」
「あれ?」
「ねえ、あれもしかしてさ」
「ヨン・・・?」
「ヨンさま?」

客席がざわついた理由とは。

バリバリにキメタ金髪。
うさんくさい色眼鏡。
これから楽器演奏するというのにコートとマフラー着用。
しかもマフラーの色は青く、巻き方にも特徴が。

で、さっきから気になるのだが、笊を小脇にかかえて後をついてくる黒子(笑)二名は何?
まさか。

舞台上に現れた不審人物は、一言も話さず、ふらーりとマイクスタンドをセットした椅子の前を通り過ぎ・・・・て戻って座った。
物憂げな動作でノコをかまえる。
黒子も左右に分かれて待機。

ふ、と気づいたかのように後をふりかえるヨンモドキ。
そこにはグランドピアノが置いてあるのだが、いつの間にかそこには純白の妖精(笑うなよ)が腰掛けて微笑んでいた。

目と目で合図。


♪ちゃらららーん ちゃらららーら
ぱらららーん ぱらららーら

わはははははははははははははははは。

おそらく日本でその年(2004年度)一番世間で話題になった『例のあのドラマ』のテーマ曲が流れ始めたとたん会場内に爆笑の渦が巻き起こった。

イントロに合わせて黒子が盛大に雪をまき散らかすので、見ていて笑いが止まらない。

ぶわっつさ
ぶわっつさ
ばささささささ

頭上からの大量の紙ふぶきに微笑み(うわーっつ)をうかべて
偽ぺはおもむろにメロディーをかなで始めた。

「ほお?」

扮装のアホラシサとは違い、演奏は(比較的)まともである。
時にやさしく。
時に激しく。
小さな体全体を使ってのダイナミックな表現。
(注:今改めて当時の音源を聞き返すとあまりの下手糞さに血の気が引きます。
よくアレで舞台上げてくれたもんだ・・・・客席から座布団投げつけられず拍手を頂いたのは
奇跡としか思えない。心の広いお客様とスタッフに改めて感謝の土下座ですよ)

ワンコーラス目を弾き切った時、演奏者には会場から暖かい拍手が送られていた。

間奏の時にも雪は奏者に降り積もる。
ノコの上に。
眼鏡と顔の間に。

つらくない?
いいえ。
ヨンサマになりきっているから平気(爆)

エンディングは音におもいきりポルタメントをかけて、
貧乏ゆすりビブラートも最大パワーに、これでもかと情に訴える演奏は、
もはや演歌の世界。

怒涛の三分間を弾き終えて。

 


「らく乃さんで『冬のソナタ~最初から今まで~でしたー!」

司会のサキタ氏は去り際のらく乃の後頭部に隠し持っていた紙ふぶきを投げつけて
スターになりきったアホ奏者をとっとと舞台から追い出したのでした。

 

2004吹田メイシアターフェス ログ

舞台の上に椅子が一脚。
ピンスポットが当たっている。
のこぎりを手に携えて登場した男はサキタハヂメ。
人気インストルメンタルデュオ『はじめにきよし』のギタリストである。

椅子に腰掛けるとピアノの伴奏が静かにながれはじめた。
曲は「ホーム、スイートホーム」
和名は「埴生の宿」

無骨なのこぎりの姿からは信じられない、かそけく美しい音色がホールに染み渡る。

サキタ氏は膝でノコギリの柄の部分を挟み、のこの背のつるつるした面をヴァイオリンの弓のようなもので擦っている。
のこの背がいわゆる弦の役目をしているのだ。
氏はときおり膝をふるわせては紡がれる音にビブラートをかけている。
その姿はまるっきり貧乏ゆすりそのものなのだが、その気の抜けた演奏スタイルこそがのこぎり演奏の最大の特徴。

お間抜け。
お気楽。
そして優雅。

演奏が終わると場内からは感動のため息と惜しみない拍手が演奏家に送られた。


「みなさま、本日は日本のこぎり音楽協会関西支部発足10周年記念特別企画『ミュージカル ソウ フェスティバル イン ジャパン~魅惑ののこぎり音楽祭』にお越しくださいましてありがとうございます。」

いつもはのほほんとしたサキタ氏の話声にも今日は流石に緊張の色が見える。
だが、本人はとても嬉しそうだ。

この日のために誂えたスーツをびしっと着こなした、のこ音関西支部長にして本日の仕掛け人は観客に語りかける。

「どうぞ楽しんでってくださいね。」


「ではまず最初のゲストをお招きいたしましょう。
都家歌六師匠です。
拍手でお出迎えください!」

紋付袴を粋に着こなした爺様が、オツムをぴかりんと光らせながら舞台袖から登場した。

「や、どーもどーも。」

のこぎり演奏暦40年の大ベテランは気さくに観客に応じる。

都家歌六。
日本のこぎり音楽協会会長。
噺家で俳優でレコードコレクター。

「ではまず一曲。『雨のブルース』、のこぎりの音が淡屋のり子さんの歌声にきこえたらご喝采を。」

びゅるおーん
ひょーん
ひゅるひゅおーん

さきほどの飄々とした物腰からは想像もつかない激しい演奏。
貧乏ゆすりもゆすりっぱなしで、履いている雪駄ぺたぺたと足から逃げて行きそうだというのは大げさか。

びょるるるるーん!

キャバレーの喧騒をも掻い潜るという爆音でありながら、まるで本当に淡屋のり子が歌っているかのようなしっとりとした情感が聴くものをとらまえる。

「いかがだったでしょうか?」

もちろんの拍手喝さい。

 

ステージは好調なスタートをきった。



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主筆者紹介
HN:
いちもんぢ らく乃
HP:
性別:
女性
職業:
危険物楽器扱業
自己紹介:
見たまま怪しい奴
ではありますが
無害です



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