懐かしの記事再掲載第一弾
「眉引いて鋸を買う女かな」の段
始まり始まり
今回のタイトルは特殊小説家であり俳人であり私の心の師匠(と勝手に思い込んでいる)倉阪鬼一郎氏の俳句から拝借した。
はっきり言って名句である。
「これってウチの事やわ~~ん。」
である。
この解釈は明らかに間違っている。
氏は「とある決意をした女の性の凄まじさ」を表現しているのであって、間違えても
「お~ま~へ~は~あ~ほ~か~♪」
というギャグをする為にノコギリを買おうとしているアホ女のことを言っているのではない。
ここで「お~ま~へ~は~あ~ほ~か~♪」を知らない読者のために少々補足をしておく。
これは関西が誇る音曲漫才トリオ『横山ホットブラザーズ』の一番有名なギャグのフレーズだ。
三人並んでいる真ん中の「アキラ師匠」が西洋ノコギリを持ち出して、「このノコギリしゃべりまんねん」とおもむろにノコを叩き妙なる調べを奏で始める。
その音階が「お~ま~へ~は~あ~ほ~か~♪」と聞こえるのである。
聞こえないとは言わせない。
そうきこえるっちゅーたら聞こえるの!
ま、とにかくそういう芸人さんがこの世にいらっしゃって今でもバリバリの現役でこのギャグを繰り広げ、お客さん達を50年以上も笑わせ続けているのである。
ここ、テストに出すから覚えておくように。
話を本題へ戻そう。
とにかく
「あのギャグをウチもやってみたいわ~ん」
とか思い続けているアホが一人居るとしよう。
必要なモノは二つ。
ノコギリと叩く撥。
撥なら幼稚園時代に使っていた木琴のマレットがある。
よしよし。
あとは金物屋さんか荒物屋さんにノコギリを買いにゆくだけだ。
彼女(そう、このアホはいい年ブッコイタ女だ)はまるで恋人とのデートに望むかのように、いそいそと身支度を整え、念入りに化粧を施し、お財布をしっかと握り締めて町へ出た。
しかし、その第一歩からいきなり躓くのである。
「無い!」
そう、今の時代、金物屋さんや荒物屋さんというお店は絶滅の危機にさらされている。そう簡単に見つからないのである。
しかし彼女はくじけなかった。大手ホームセンターへと足先を向ける。
ここなら手に入るだろう。足取りは自然とスキップを踏んでいる。
着いた。
あとは工具コーナーでブツを入手するだけだ。
彼女はニマニマと気持ちの悪い笑みを浮かべながらノコギリの陳列棚を眺め始めた。変態以外の何者でもない。
ところがその表情がしだいに険しくなる。
「・・・・無い・・・・。」
いや、ノコギリ自体は有る。
売るほど有る。(当たり前だ。)
糸鋸から大工の玄さん向けの両刃、ジェイソン君御用達のチェーンソーまでいろいろある。
ただ彼女が望むモノだけが無かった。
西洋のこぎり。
台形型の例のアレが無い。
日本のノコギリは基本的に長方形なのだ。
「無い!無い!無い!」
取り寄せが効くか店員に詰め寄るが気味悪がられるだけでラチがあかない、ってゆーかこのままだと通報されるではないか。
彼女は電車に飛び乗った。都心に出よう。トーキューハンズなら海外モノだって手に入るはずだ。
だが、しかし、ここでも失望してしまうのである。
ハンズの名誉の為に書いておくが、西洋ノコギリは一応取り扱ってくれていた。店頭に無かったので本社に在庫がないか確認もしてくれた。タイミングが悪かったのである。
そして、このアホが望むような
「でっかいノコギリ」
なんて買いに来る客が来るなんてお店の人だって念頭に無かったのである。
がっくり肩を落として帰宅する彼女。
はたして夢のノコギリを手にいれることが出来るのであろうか?
さて。
前回の話をおさらいすると、
1・「のこぎり音楽」には「西洋のこぎり」じゃないとだめ
2・で、買おうにも、そんじょそこらで簡単に手にはいらないぞ
ということでしたね。
結果からいうと私はノコギリ音楽家からコネを使って手にいれた。
ぶっちゃけて言うと
若手演奏者のS師匠に弟子入りして師匠に「お取り寄せ」してもらっちゃったのである。
ううむ、身も蓋もない。
現在こうして家でパソコンを操る身になってみると、のこぎりは「ミュージカル・ソー」「シンギング・ソー」という名で楽器として取り扱われており、日本国内でも個人で生産、販売をしていらっしゃる方も居られるので、ネットでポンと買うことができることが判明。
おいおい、あの苦労は何だったんだよよよよよよん。
とにかく「例のブツ」を手に入れるには
1・インターネットで検索して海外から個人輸入。
2・日本のノコギリ演奏家のサイトにアクセスしてみて販売も行っているか尋ねてみる。
3・海外旅行に行く人に「お土産」として買ってきてもらう。
4・偶然の出会いを求めて、ひたすら町をさまよいあるく。
・・・・・しか今のところはない。
ノコが欲しい諸君、がんばってくれたまえ。
因みに私が現在所有しているノコは
壱号 ミュッセル&ウエッソン社26インチ(音楽用)
S師匠のコネで購入
ノコ・弓・松脂・専用ケース・取り扱い説明書つき
¥2.1000
弐号 タイワンからのお土産26インチ(業務用)
本当に切れるノコ本体のみ
¥3.500
(のちに知人に譲ったので今は手元にない)
参号 在庫処分品?日本の某所の100円ショップ品(業務用)
ノコ友が買い占めた分を分けてくれたミニサイズ
¥100
四号・伍号 中国みやげ(業務用)
小ぶり。ソプラノ。
二本で¥1.000
六号 タケ・プラスチックが切れるミニノコ「竹プラ175S」
商店街の金物屋で購入
微妙に台形型。
叩いても弾いても一応音階らしきものが聞こえます。
専用の弓を開発すれば使えるかも。
100円ノコより小さい刃渡り180mm。
¥770
てなところ。
(
上記は2004年度のデータによるもの
現在2007年度地点では 七号・ブラックロック28インチ 八号・同26インチを所有
2006年に中国で買ってきたものは二本とも知人に譲りました
このほか鳴らなく楽器として使えないブツも数点所有しています)
因みに叩くバチは
「仏具屋」購入したもので木魚用ばち(小)
¥1.000
なり。
購入するときお店のご主人に妙な顔をされても気にするなよな。
そうまでして「台形」にこだわるのには訳が有る。
木琴の形を思い出してみてくれたまえ。
長さの違う木の板が、長さの順に並んでいる。
一番長い板を叩くと低い音。
一番短い板を叩くと高い音。
それが長さの順に並んでいるから音階が生まれる。
ノコギリも同じ。
刃の幅の広いところを叩くと低い音。
狭いところを叩くと高い音。
つまりそういうことなのだ。
日本式の長方形のノコだと、叩くと
音は鳴るが メロディを奏でられない
からなのである。
理解していただけたであろうか。
さいごに
日本が誇る若きノコギリ奏者「サキタハヂメ」氏がプロデュースしたミュージカル・ソーが近々発売されるらしい。
大変喜ばしいことである。
(
とか言うてて未だ発売にこぎつけていません
いつになることやら・・・・ねえ)
これが全国の楽器店で取り扱われるようになって、誰でも簡単にノコギリ音楽を楽しめる日が来ることを私は心待ちにしている。
了
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