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のこぎり莫迦につき危険なり取り扱い注意
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2004吹田メイシアターフェス ログ

舞台のライトが消え、客席が明るくなった。

軽く伸び一つ。
小腹が空いたな、さっきもらったドラ焼きをカバンの中から出そうか。

♪ぴーん ぽ-ん ぱーん ぽーん
ご来場のお客様に申し上げます
ホール内でのご飲食はお断りいたしております
ドラ焼きをお召し上がりになるさいは
かならずロビーにてお願いいたします
♪ぴーん ぽ-ん ぱーん ぽーん


・・・・・・・行動見透かされている。
って、いうか今の声、どこかで聞き覚えが。
誰だっけ?

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2004吹田メイシアターフェス ログ

アホがひとり舞台からおいだされて。

「"ゴールデン フライ"のみなさんです。」

紹介されて登場したのは男性1名女性2名のユニットである。
男性はギターを女性は鋸を手に携えて椅子にこしかける。

三人とも黒いタートルネックに色違いのハンチング帽子。
中々のおしゃれさんだ。

彼らは通称「ゴーフラ」と呼ばれている。
主に京都方面でライヴ活動を展開中でほっこりとした和める演奏が人気である。

曲のタイトルは「kai」

ギターの伴奏に二本のノコぎりの音が浮遊するようにからまってゆく。
ノコの性質上、ハモることは大変難しいのだが、彼らにはなんの不響も見られない。

ふぃよーん ふゅおーん
ふぁららららららら

これはマレットで叩かず弓で奏でるからこそ出せる不可思議なハーモニーだ。

ふぁー ふぃよーん
ふぁららららー らー

開場中が静まり返って聞きほれている。

曲がおわってからもしばらく余韻に浸りたい、そんな演奏だった。

 

ゴーフラが退場して、サキタ氏が次のグループを紹介しようとマイクをにぎると
「な、なんや、なんや君らは?」

ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ

全身黒尽くめの集団が一列になって舞台に現れた。
だれもかれも無表情で、一言も語らない。

ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ

彼らは舞台に上りきっても行進を止めない。
舞台の上に円を描いている。

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる

周りを明るく照らしていたライトが消えた。

ぽうっと一箇所だけが光っている。
彼らのうちの一人が舞台中央に不思議な形をしたランプを灯したのだ。
ランプを囲むようにして、集団は舞台のうえに正座をしてノコとマレットを構えた。

ぼーん ぼーん ぼーんぼーん

ンカカ ンカ ンカカ ンカ

コーン コン コーン コン

じゃかじゃか じゃっじゃか じゃかじゃか じゃっじゃか

ノコギリの形状や叩くバチ、演奏法の違いにより様々な音色がきこえてくる。

「ほっ!」

掛け声とともにメロデイが始まった。
ロシア民謡「カチューシャ」だ。

びゅおーん びょびょーん
ここんこ こんこん

暗いライティングと哀愁漂うメロデイがなんともいえない異様な雰囲気をつくりあげている。
まるで何かを魔法で召還しているようだ。

1コーラス目が終わった。

「はっ!」

2コーラス目はテンポが上がっている。

「ひょっ!」

3コーラス目になるとさらに演奏スピードは加速する。

「ヒョホー!」

ンカ! ンカンカ!

「ホッ ホッ!」

ぼーん ぼーん ぼーん!

「ハッ! ホッ!」

ゴンガ ゴンガ ゴンガ!

ガンガン!!


ぴ・たと全員の動きが止まる。

終わったのか?
拍手しかけると。


「ホー!」

ごが ごが ごが ごが ごが!
びーよよ びんよー びーよよ びんよー!

さらにテンションの高い演奏がはじまった。

ごが ごが ごが ごが ごが!
びーよよ びんよー びーよよ びんよー!
ごが ごが ごが ごが ごが!
びーよよ びんよー びーよよ びんよー!

もう誰にも止められない。

最高にもりあがったところで

がっ!と演奏は止んだ。
こんどは本当に終わったらしい。

割れんばかりの拍手の中、集団は一礼の後再びぐるぐると円を描いて行進をはじめた。
そしてするすると舞台袖の法へと消えていった。
不思議なことに中央に据えてあったランプもいつの間にかなくなっていた。

「カチューシャ2004でしたー。」

ここでサキタ氏は再びノコを持って登場。
弓をつかって
『君と旅立とう』を叙情豊かに弾きこなす。

ここで第一部は終了、一旦休憩となった。

2004吹田メイシアターフェス ログ

「らく乃さんです」

司会に呼び出されて舞台袖から登場した人物を目にした客席にびみょ~~~な空気が漂った。


「・・・・・?」
「あれ?」
「ねえ、あれもしかしてさ」
「ヨン・・・?」
「ヨンさま?」

客席がざわついた理由とは。

バリバリにキメタ金髪。
うさんくさい色眼鏡。
これから楽器演奏するというのにコートとマフラー着用。
しかもマフラーの色は青く、巻き方にも特徴が。

で、さっきから気になるのだが、笊を小脇にかかえて後をついてくる黒子(笑)二名は何?
まさか。

舞台上に現れた不審人物は、一言も話さず、ふらーりとマイクスタンドをセットした椅子の前を通り過ぎ・・・・て戻って座った。
物憂げな動作でノコをかまえる。
黒子も左右に分かれて待機。

ふ、と気づいたかのように後をふりかえるヨンモドキ。
そこにはグランドピアノが置いてあるのだが、いつの間にかそこには純白の妖精(笑うなよ)が腰掛けて微笑んでいた。

目と目で合図。


♪ちゃらららーん ちゃらららーら
ぱらららーん ぱらららーら

わはははははははははははははははは。

おそらく日本でその年(2004年度)一番世間で話題になった『例のあのドラマ』のテーマ曲が流れ始めたとたん会場内に爆笑の渦が巻き起こった。

イントロに合わせて黒子が盛大に雪をまき散らかすので、見ていて笑いが止まらない。

ぶわっつさ
ぶわっつさ
ばささささささ

頭上からの大量の紙ふぶきに微笑み(うわーっつ)をうかべて
偽ぺはおもむろにメロディーをかなで始めた。

「ほお?」

扮装のアホラシサとは違い、演奏は(比較的)まともである。
時にやさしく。
時に激しく。
小さな体全体を使ってのダイナミックな表現。
(注:今改めて当時の音源を聞き返すとあまりの下手糞さに血の気が引きます。
よくアレで舞台上げてくれたもんだ・・・・客席から座布団投げつけられず拍手を頂いたのは
奇跡としか思えない。心の広いお客様とスタッフに改めて感謝の土下座ですよ)

ワンコーラス目を弾き切った時、演奏者には会場から暖かい拍手が送られていた。

間奏の時にも雪は奏者に降り積もる。
ノコの上に。
眼鏡と顔の間に。

つらくない?
いいえ。
ヨンサマになりきっているから平気(爆)

エンディングは音におもいきりポルタメントをかけて、
貧乏ゆすりビブラートも最大パワーに、これでもかと情に訴える演奏は、
もはや演歌の世界。

怒涛の三分間を弾き終えて。

 


「らく乃さんで『冬のソナタ~最初から今まで~でしたー!」

司会のサキタ氏は去り際のらく乃の後頭部に隠し持っていた紙ふぶきを投げつけて
スターになりきったアホ奏者をとっとと舞台から追い出したのでした。

 

2004吹田メイシアターフェス ログ

舞台の上に椅子が一脚。
ピンスポットが当たっている。
のこぎりを手に携えて登場した男はサキタハヂメ。
人気インストルメンタルデュオ『はじめにきよし』のギタリストである。

椅子に腰掛けるとピアノの伴奏が静かにながれはじめた。
曲は「ホーム、スイートホーム」
和名は「埴生の宿」

無骨なのこぎりの姿からは信じられない、かそけく美しい音色がホールに染み渡る。

サキタ氏は膝でノコギリの柄の部分を挟み、のこの背のつるつるした面をヴァイオリンの弓のようなもので擦っている。
のこの背がいわゆる弦の役目をしているのだ。
氏はときおり膝をふるわせては紡がれる音にビブラートをかけている。
その姿はまるっきり貧乏ゆすりそのものなのだが、その気の抜けた演奏スタイルこそがのこぎり演奏の最大の特徴。

お間抜け。
お気楽。
そして優雅。

演奏が終わると場内からは感動のため息と惜しみない拍手が演奏家に送られた。


「みなさま、本日は日本のこぎり音楽協会関西支部発足10周年記念特別企画『ミュージカル ソウ フェスティバル イン ジャパン~魅惑ののこぎり音楽祭』にお越しくださいましてありがとうございます。」

いつもはのほほんとしたサキタ氏の話声にも今日は流石に緊張の色が見える。
だが、本人はとても嬉しそうだ。

この日のために誂えたスーツをびしっと着こなした、のこ音関西支部長にして本日の仕掛け人は観客に語りかける。

「どうぞ楽しんでってくださいね。」


「ではまず最初のゲストをお招きいたしましょう。
都家歌六師匠です。
拍手でお出迎えください!」

紋付袴を粋に着こなした爺様が、オツムをぴかりんと光らせながら舞台袖から登場した。

「や、どーもどーも。」

のこぎり演奏暦40年の大ベテランは気さくに観客に応じる。

都家歌六。
日本のこぎり音楽協会会長。
噺家で俳優でレコードコレクター。

「ではまず一曲。『雨のブルース』、のこぎりの音が淡屋のり子さんの歌声にきこえたらご喝采を。」

びゅるおーん
ひょーん
ひゅるひゅおーん

さきほどの飄々とした物腰からは想像もつかない激しい演奏。
貧乏ゆすりもゆすりっぱなしで、履いている雪駄ぺたぺたと足から逃げて行きそうだというのは大げさか。

びょるるるるーん!

キャバレーの喧騒をも掻い潜るという爆音でありながら、まるで本当に淡屋のり子が歌っているかのようなしっとりとした情感が聴くものをとらまえる。

「いかがだったでしょうか?」

もちろんの拍手喝さい。

 

ステージは好調なスタートをきった。

2004吹田メイシアターフェス ログ 

しんしんと冷え込む11月の夕方。
吹田メイシアター中ホールに集まる人々。
おそらく日本で初めての「のこぎり音楽祭」を見るために地元大阪府民はもとより京都、滋賀、東京、埼玉・・・・遠く北海道からもはるばるやってきた心優しいひとたち。

チケットを握り締めて開場を心待ちにしていると
「パンフレットいかがですか~」と物販部のお嬢さんたちが行商にやってきた。
黒い表紙にかわいらしい椅子とノコの絵がかいてある。
フルカラー、写真も沢山。
サキタハヂメのノコ講座も収録されていて¥700はお買い得。

パンフレットを買って中身をぱらぱら眺めていると時間になった。

「チケットをお一人づつお持ちくださーい」
「チケットお預かりのお客様は受付こちらですー」

もぎりのお兄さんお姉さんにチケットをわたすと、チラシとともに丸くてやわらかい物体を手渡された。

なんじゃこりゃ?
『大阪銘菓 茜○の五色ド○焼き』
・・・・・・チケットに1drつきと書いてあったのは ドリンクじゃなくてドラ焼きだったのか! 


あっけにとられながらロビーへと入ると、コ○ケヤポリンキーみたいな愛らしいオブジェ「弓くんとマレット君」がお出迎え。
のこ音メンバーの美大生S君の自信作。

その横では物販スペースの売り子が台詞カミカミ売り声をはりあげている。
「いらっしゃいまーせ」
・・・なんか、約一名アラブのひとみたいにベールかぶってめちゃくちゃ怪しいのがいるんだけれど・・・・。
このひとも関係者か?

売り場をのぞくと。
先ほど外でも販売していたパンフレット
ノコ音滋賀支部提供のこぎり教則本
都家歌六師匠のCD
アコーデオンユニット、リュクサンブール公園のCD

ううむ。欲しい。

買い物を済ませてホールに入ろうとしたらTV局の取材にでくわした。
2こと3ことインタビューにこたえる。
今のオンエアされるのかな、どきどき。

会場はちゃくちゃくと観客で埋まってゆく。
全席自由なので席は詰めてお座りください。

やがて、開場のアナウンスが流れて。
さあ、始まりだ!

 

 

 

 

 


 
そのころ舞台裏では
「ええか、みんな。気合いれていくでー」
「あの・・ホット師匠達、まだいらっしゃってませんが」
「リハーサルにも間に合わへんかったね」
「どないするん、一度も合奏あわしてへんで」
「・・・・・・・・・」
「と、とにかく本番やあ」
「気合入れるでー」
「よっしゃ!いくでみんな」
「お、おおおー!」

2004吹田メイシアターフェスティヴァル ログ

でん どん
でん どん
でん!
ぱぱらぱー ぱらららぱー 
じゃじゃーん!!

来た。
とうとうこの日が来た。
2004年11月12日金曜日。
時間は朝の9時。
コンサートが始まるのは夜の7時。
来るの早すぎますか?
いえいえ。
これからリハーサルやらいろいろ仕事があるのです。

この日は日本で初めての「のこぎり音楽音楽祭」が大阪府吹田市にあるメイシアター中ホールで行われるのです。

ううううう。
長く苦しい一年であった。

コンサートの企画運営出演すべてのこぎり音楽好きな有志によるボランテアでまかなっているんだものなあ。
みんな他に仕事を持っているのによくやるよなあ。

感無量に浸りつつも、他のメンバーより一足先に会場にやってまいりましたのには訳が有る。
この大きなスーツケース。
衣装や差し入れのお菓子など詰め込んでおります。
今回のコンサートでは微力ながら力になろうと私もボランテアスタッフに参加しておりまして、担当の物販スペースのPOP等飾りつけにやってきたのであります。

それにしては服と化粧品が多くないかですって?
靴も二足もってきているし?

ふふふふふふふふ。
お色直し用ですがなお客さん。

なんとらく乃は「のこぎりオーケストラ」以外に「ソロ演奏」もしちゃうのである今回。

ひひひひひ。


まずは第一部でのソロ用衣装に着替えておかなくては。
楽屋の大きさに対してノコオケメンバーは多すぎるぐらいだから、混雑を避けるためにも時間のかかりそうなわたしの支度は空いているうちに手早く済ましましょう。

この日のために入手しておいた例のアレ。
うひひひひひ。
皆びっくりするぞ。

ネタばれを防ぐためにストールで体を隠して準備OK。
物販スペース作りにとりかかります。

そうこうしているうちにオーケストラのメンバーもちらほらやってきました。
よっしゃー。
気合いれていくぞ、オラー!

 

今回より「ミュージカル ソー フェスティバル イン ジャパン 2004」のレポートを連載いたします。
よろしく。

今回のシークレット演奏会のそのまたシークレットゲストというのが、あの極楽インストルメンタルギターデュオ「ゴンチチ」のチチ松村さんだった。
超一流ミュージシャンである。
彼は日本のこぎり音楽協会の関西支部員であった為ビジネス抜きで演奏会に参加してくれた。
実にいいひとである。
いいひとであるのだが・・・・。

なんというか、その、つかみどころのないお方だなあという印象を持った。
平たくいえば
挙動不審を絵にかいたような感じだったのだ。
(チチさんごめんなさい)

歌六師匠の演奏中に客席からゆら~りと立ち上がり
照明のスイッチを勝手にいじって明かりを消してしまったり
他人のノコギリ型のライターを、さも自分が見つけ出して買ったかのような素振りで皆に見せびらかしたり。

こちらとしてもツッコンでよいものかどうかリアクションに困るではないか。

今回の演奏会も「ノコ音協」のイベントということでチチさんもマイのこぎりを持参してくれていたのだが
「見~せ~る~だ~け~」
で演奏はウクレレのみだった。

あの・・・別にいいんですけどね。
私、イヴェントで何度かご一緒させていただいておりますがチチさんがのこぎりを演奏している姿を一度も拝見していないんですが・・・・・・。

気にしたら負けってこと?
(注:同年11月に行われた吹田のフェスにてようやっと演奏を拝むことができました。
詳しくは「十周年だよ~」にてレポートしています)

まあ、そおいうお方です。

ちなみにチチ松村さんの「チチ」は好きな曲のタイトルから取ってつけたそうです。
相方のゴンザレス三上さんの「ゴンザレス」は好きなレスラーのリングネームだという話です。

はい、皆さん「へえーボタン」を連打してください。



ぽろろろーんと軽やかなウクレレの音が流れ始めた。
曲目は「スワニー河」
歌六師匠のCD「究極ののこぎり音楽」に収録されている。 

CDの中でもチチさんと師匠はコンビを組んでいた。
何度も繰り返して聴いていた大好きなナンバーだ。
生演奏を間近で体感できて感激モノである。
演奏している二人もとても気持ちよさそうだ。 

チチさんはこの曲のためにスチィ-ル製のかっちょいいウクレレを用意してくれていた。
「のこぎりと同じ鉄モノでいいかなと思って」とチチさんは語る。
ナイスチョイス。

ゆったりと ながれる あたたかくて しあわせな じかん。

映画「SF サムライフィクション」のワンシーンがふわっと脳裏に浮かんだ。
あの映画の中でも師匠はこの曲を演奏していたっけ。
(機会があれば是非みてくださいね。)

しあわせな時間はあっという間に過ぎてゆくなあ。

名残惜しいけれどもうおしまいの曲になった。
「グノーのアヴェマリア」

♪アーヴェー マリーアー

 


この後歌六師匠に質問のコーナーがあったが、その話はまた別の機会に。
かなりトンチンカンで大爆笑な受け答えが取り交わされていた事だけを報告しておこう。

これで歌六シークレットリサイタルのレポートは終了します。



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主筆者紹介
HN:
いちもんぢ らく乃
HP:
性別:
女性
職業:
危険物楽器扱業
自己紹介:
見たまま怪しい奴
ではありますが
無害です



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